神戸の相続・遺産分割弁護士 シノディア法律事務所

ご相談の内容

昨年、父が亡くなり相続が発生しました。
私の両親は、私が小さいころに離婚しており、父の法定相続人は、私のほか、再婚相手の女性と、その女性との間に生まれた子の3名です。
私の父は、預貯金等の金融資産のほかに、自宅土地建物に加えて複数の収益物件を所有していたようですが、全ての遺産を再婚相手の女性に相続させるとの公正証書遺言を残していました。
私は、父母が離婚したあとは、母のもとで暮らしており、父とは疎遠でしたが、ネットなどを調べたところ、遺言によって財産をもらえなかった相続人にも、遺留分という権利があるようですので、私も遺留分を主張したいと考えております。
具体的にはどのようにすれば良いでしょうか。
 

回答

1.遺留分権利者

遺留分を主張することができる相続人は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。
配偶者は、常に相続人にあたりますので、遺留分権利者となります。
被相続人に子がいる場合、子は、第1順位の法定相続人ですので、遺留分権利者となります。
子が被相続人の相続開始以前に亡くなっていた場合でも、代襲相続人がいる場合は、代襲相続人も遺留分権利者となります。
被相続人に子がいない場合は、第2順位の法定相続人である直系尊属(父母等)が遺留分権利者となります。
他方で、兄弟姉妹は、子、直系尊属に次ぐ、第3順位の法定相続人ですが、法律上、遺留分権利者の範囲からは除外されています。
すなわち、兄弟姉妹には、遺留分はありません。
相談者は、被相続人の子ですから、遺留分権利者です。
 

2.遺留分侵害額請求権

このように兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分が保障されています。
もっとも、自分が遺留分権利者にあたるからといって、黙って待っていてはいけません。
民法では、遺留分権利者が、遺留分に基づき権利主張をするためには、単に相続が開始しただけでは足りず、遺留分権利者がその遺留分に関する権利を「行使」することによって、はじめて具体的な請求が可能となるからです。
 
すなわち、遺留分権利者は、被相続人のした遺言や生前贈与によって、遺留分に満たない取り分しか得られなくなった場合に、遺言や贈与によって財産を得た人(遺言よって財産を受け取った人を受遺者、贈与を受けた人を受贈者と言います)に対して、遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示をすることで、はじめて、遺留分侵害額に相当する金銭債権を取得することができます。
 
もっとも、この遺留分侵害額請求権を行使する段階(意思表示をする時点)では、必ずしも具体的な金額を特定して意思表示を行う必要はありません。
 
というのも、遺言や生前贈与によって、遺留分権利者の遺留分がどれだけ侵害されたか(遺留分侵害額が幾らか)を明らかにするためには、遺産に含まれる積極財産の額や相続債務の額といった遺産の全体像に関する情報に加えて、遺贈や贈与の対象となった財産の評価に関する情報が必要となります。
 
しかしながら、遺留分権利者は、これらの情報を有していないことも多く、これらの情報を収集するにも相当の時間と労力を要する場合があります。
にもかかわらず、当初の意思表示の段階で、具体的な金額を特定しなければならないとすることは、遺留分権利者にとって酷であるからです。
 

3.遺留分侵害額請求権の相手方

上述のとおり、遺留分権利者が具体的な権利主張を行うには、遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示が必要です。
 
では、遺留分侵害額請求権の意思表示は誰に対して行う必要があるのでしょうか。
この点については、遺留分を侵害する遺言・贈与によって財産を取得した受遺者・受贈者(及びこれらの包括承継人)が相手方となると解されています。
 

4.期間制限

遺留分侵害額請求権の行使には、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈(なお、この遺贈には「特定財産承継遺言」≒「相続させる遺言」)を含みます)があったことを知った時から1年という期間制限があります。
この期間が経過してしまうと、遺留分侵害額請求は時効によって消滅してしまいます。
 
また、相続開始から10年が経過した場合も、同様に、遺留分侵害額請求権は行使できなくなります。
 

5.まとめ

本件の相談者は、①被相続人である父が昨年亡くなったこと及び②父が全ての遺産を配偶者に相続させるとの遺言を残していたことをいずれも認識しています。
遺産の正確な全体像は不明ですが、問題の遺言が全ての遺産を配偶者に相続させるという内容である上、本件では相談者が父から生前に贈与を受けていたといった事情もうかがわれない以上、当該遺言が相談者の遺留分を侵害していることは明らかですから、相続の開始及び遺留分を侵害する遺贈があったことを知った時から1年という時効期間はすでに進行を開始しています。
上述のように、遺留分侵害額請求権の意思表示を行うには、具体的な金額の特定は不要ですので、遺留分に関する権利主張を考えるのであれば、速やかに、配偶者に対し、遺留分侵害額請求権を行使するとの意思表示を配達証明付き内容証明郵便で通知すべきです。
 
その上で、相手方から相続財産に関する資料の開示を受け、遺留分侵害額の支払いを求める交渉を進めましょう。
遺留分侵害額請求権の行使に関する内容証明郵便の作成や、その後の相手方との交渉については、自己の正当な権利を確実に守るためにも、専門家である弁護士に依頼して進めることをお勧めします。

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