神戸の相続・遺産分割弁護士 シノディア法律事務所

1 遺産分割の対象

遺産分割の対象となる遺産は、原則として、①相続開始時に存在し、かつ、②遺産分割時にも存在する③未分割の遺産であることが必要です。

(1)相続開始時に存在する遺産であること

遺産分割の対象となる財産は、相続開始時に被相続人の財産として存在している財産であることが必要です。したがって、相続開始直前に出金された預貯金は、相続開時には存在しない財産であるため、遺産分割の対象にはなりません。

(2)遺産分割時に存在する遺産であること

次に、相続開始時に、被相続人の財産として存在していたものであっても、遺産分割が成立するまでの間に無くなってしまえば、遺産分割の対象にはなりません。
たとえば、相続開始時に存在していた預貯金であっても、他の相続人が出金して費消してしまえば、遺産分割時には存在しないのですから、遺産分割の対象とすることはできません。ただし、平成30年に成立した改正相続法によれば、預貯金を出金費消した相続人以外の相続人全員が同意すれば、費消した預貯金が存在するものとみなして遺産分割の対象とすることが可能です(民法906条の2)

(3)未分割の遺産であること

遺産分割の対象は、未分割の遺産です。したがって、すでに遺産分割済みの財産については、改めて遺産分割の対象とすることはできません。

2 個別的検討

相続人は、相続開始の時から、被相続人の一身に専属する財産を除き、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(896条)。しかし、相続の対象となる財産が全て遺産分割の対象となるわけではありません。財産の性質如何によっては、遺産分割の対象とならないとされているものもあります。以下では、各財産について、それが遺産分割の対象財産となるかどうかを示します。

 
 

(1)不動産

不動産が遺産分割の対象となることに異論はありません。もっとも、収益物件のような賃貸不動産から得られる賃料債権(法定果実)について、判例は、遺産とは別個の財産であり、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得すると述べており、遺産分割の対象財産にはならないものと解されています。

(2)遺産から生じた果実・収益

先に述べたとおり、賃貸不動産から得られる賃料債権(法定果実)について、判例は、遺産とは別個の財産であると述べており(最判平成17年9月8日民集59巻7号1931頁)、遺産分割の対象とはならないものと解されています。

(3)預貯金

預貯金について、従前は、遺産分割の対象とならないとされていましたが、判例変更(最高裁平成28年12月19日大法廷決定民集70巻8号2121頁)により、遺産分割の対象財産に含まれるようになりました(普通預金・通常貯金・定期貯金について判示。なお、定期預金・定期積金につき最判平成29年4月6日金融法務事情2064号6頁)。

(4)現金

現金は遺産分割の対象となります。

(5)投資信託・国債・株式

最高裁は、委託者指図型投資信託の信託受益権、国債、株式について、当然分割を否定していることから(最判平成26年2月25日民集68巻2号173頁)、これらの財産は遺産分割の対象となると解されています。

(6)保険金

保険金が、相続財産に含まれるものとして遺産分割の対象となるのか、それとも保険金受取人の固有財産となるかは、保険契約・約款において指定された受取人の解釈により定まります。
判例は、特定の人が保険金受取人として指定されている場合だけでなく、単に「相続人」として指定されている場合であっても、保険金は指定された受取人の固有財産であって、相続財産には含まれないとしています(最判昭和40年2月2日民集19巻1号1頁)。
これに対し、被相続人が自身を受取人として指定していた場合は、保険金は相続財産に含まれるものして遺産分割の対象となると解されています。

(7)死亡退職金

支給規定の有無を確認の上、具体的な事案に応じて遺産に含まれるかどうかを検討することになります。なお、地方公務員である県の学校職員の死亡退職手当について、判例は、受給権者固有の権利であるとして、遺産性を否定しいてます(最判昭和58年10月14日判時1124号186頁)。

(8)損害賠償請求権

被相続人の有する損害賠償請求権は、相続の対象ではありますが、可分債権であるため、相続開始と同時に法律上当然分割され、各相続人が法定相続分に従い分割取得するため、遺産分割の対象とはならないものと解されています(最判昭和29年4月8日民集8巻4号819頁)。

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