神戸の相続・遺産分割弁護士 シノディア法律事務所

1 遺言とは

遺言とは、人が自分の死後に一定の法律効果が発生することを意図してした意思表示を言います。
この遺言をした人を遺言者と言います。
遺言は、遺言者の意思表示のみによって成立しますが、この意思表示は、民法に定められた方式でしなければならず、方式に違反した遺言は無効となります(民法960条)。
したがって、遺言をする場合には、民法の定める方式に違反することのないよう十分に注意をする必要があります。
また、遺言をするには、その時点で遺言者に意思能力が備わっていなければなりません。
意思能力を欠いた状態でされた遺言は無効となります(民法3条の2)。
したがって、相続が発生し、相続人の遺言書が発見された場合であっても、その遺言書が、民法の定める方式に違反したものではないかどうか、遺言者が意思能力を有する状態で作成されたものかどうかを十分に検討する必要があります。
 

2 遺言の方式について

民法が定める遺言は、(1)普通方式の遺言と、(2)特別方式の遺言とがあります。
原則は、普通方式の遺言によりますが、遺言者が死の危機に瀕している場合や、伝染病のため行政処分を受け隔離されている場合など、普通方式による遺言をすることが不可能または著しく困難である場合には、例外的に特別方式の遺言によることが許されています。
以下では、まず普通方式の遺言について説明した上で、次に特別方式の遺言について簡単に触れます。
 

(1)普通方式の遺言

普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
 

ア 自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書し、押印して作成する方式の遺言です(民法968条)。
自筆証書遺言は、遺言者のみで作成することが可能であるため、遺言書作成に要する費用をもっとも少なくすることができるというメリットがあります。
他方で、自筆証書遺言は、法律専門家の関与が義務付けられていないため、自分だけで遺言書を作成してしまうと、後日、方式不備で無効となる危険があります。
また、自分だけで遺言書を作成すると、遺言書の内容に矛盾が生じたり、内容が不明確なものとなったりしてしまうおそれがあります。
このような遺言書を作成してしまうと、遺言の解釈・効力をめぐって、後日紛争となる可能性があります。
 

 イ 公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者が遺言の趣旨を公証人に伝え、公証人がこれを筆記して公正証書による遺言書を作成する方式の遺言です(民法969条)。
公正証書遺言は、遺言の作成にあたり、公証人が関与するため、方式不備のおそれが少なく、自筆証書遺言と比較して、効力をめぐる紛争も生じにくいとされています。
また、遺言書の原本が公証役場に保管されるため紛失・偽造・改ざんが生じるおそれもありません。
 

 ウ 秘密証書遺言

秘密証書遺言は、まず、遺言者が遺言内容の記載された証書に署名・押印し、その証書を封じた上で、証書に押印した印章を用いて封印をし、次に、その封書を公証人及び証人2名以上の前に提出し、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述し、さらに、公証人がその証書の提出された日付及び遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者及び証人とともに署名・押印する方式の遺言です(民法970条)。
秘密証書遺言は、公証人が関与する点は、公正証書遺言と同様ですが、遺言の内容にまでは公証人のチェックが及ばないため、自筆証書遺言と同様、後日、遺言の解釈をめぐって紛争が生じるおそれがあります。
 

(2)特別方式の遺言

特別方式の遺言には、死亡危急者遺言(民法976条)、伝染病隔離者遺言(民法977条)、在船者遺言(民法978条)、船舶遭難者遺言(民法979条)があります。
特別方式の遺言は、病気等により死亡の危急に迫った状況にある場合などにおいて、方式要件を緩和した方法での遺言を特別に認めるものです。
特別方式による遺言は、その遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、効力を失います(民法983条)。
 

3 遺言の無効・取消し

遺言の成立過程に問題がある場合や、遺言の内容に問題がある場合には、遺言が無効となったり、取り消されたりして、その効力が否定される場合があります。
 

(1)方式違反

前述のとおり、民法で定められた方式に違反する遺言は、無効となります(民法960条、975条)。
 

(2)遺言をする能力を欠く場合

遺言時に、遺言者に意思能力がない場合に、その遺言は無効となります(民法3条の2)。
また、15歳未満の者による遺言は、遺言能力を欠くものとして無効となります(民法961条、963条)。
 

(3)錯誤・詐欺・強迫による遺言

錯誤や詐欺・脅迫によって遺言をした場合には、遺言者はその遺言を取り消すことができます(民法95条、96条)。
 

(4)遺言内容に問題がある場合

公序良俗や強行法規に反する内容の遺言は、無効となります(民法90条)
また、解釈によっても遺言の内容を確定することができない場合や、法定された遺言事項に該当しない遺言は、無効となります。
 

4 まとめ

これまで見てきたとおり、遺言は、その方式が法律で厳格に定められている上、不明確な内容の遺言書を作成してしまうと、その解釈をめぐって後日争いが生じる可能性があります。
また、せっかく遺言書を作成しても、その内容が法律に反している場合には、無効となってしまうこともあります。
したがって、遺言書の作成をする場合には、必ず弁護士等の法律専門家に相談されることをお勧めします。
また、相続開始後、遺言書が発見されたとしても、その有効性に問題がある場合もあります。
遺言書の効力に疑いがある場合にも、弁護士に相談されることをお勧めします。

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